TW4、サイキックハーツの杜羽子・殊(d03083)のキャラブログ。仮プレだったりSSだったり。SSは少し暗め。分からない人はカムバック推奨。コメントはお気軽にどうぞ。
世界を捨てた少女は、何の夢を見るか?
パス付きは殊が書きなぐったもの。数字4文字。どうしても気になる人はお手紙でどうぞ。
始まらなければ、終わらなかったのに。
※オリジナルキャラ登場あり。
「菊華は、まほうつかいみたいだ」
「……どうしたの、いきなり?」
ふと思って呟いた言葉の返事は、とても胡乱げだった。
ソファーの上から不思議そうな顔を覗かせてきた彼女に、床に座っていた殊は今読んでいた絵本のページを見せる。そこに登場する魔法使いは、不思議なことを簡単に叶えてしまう優しくて、強い人だった。
「これ。菊華も、できるかなって」
「……いや、出来ないよ?」
「そうなの?」
本気で驚く殊に、彼女は小さく苦笑する。ぽん、と殊の淡い髪色の頭に手を置くと、その手からそっと絵本を取り上げた。
「それにしても魔法使いか……なんでそう思ったの?」
「だって……」
行儀よくソファーに座る彼女の足に寄りかかった。撫でてくれる手が酷く心地よく、甘えるように膝へと頭を乗せる。彼女は小さく笑うだけで、されるがままでいてくれた。
「菊華は、ボクになんでも、くれたから」
「そうかなぁ……」
「くれたよ。名前も、生きるってことも、ボクの全てを」
そうかなぁと、彼女はまた繰り返す。しかし、殊はいたって真面目だった。
「菊華がいなかったら、きっとボクはなにもなかった。何も知らず、何も感じず、ただ生きていくだけだった。だから、菊華は、全部をボクにくれたんだ」
「……殊はそれで、幸せ?」
ゆっくりと撫でていた手を止め、彼女はぽつりと問いかける。その声がいつになく力なく聞こえて、殊は顔をあげる。
自分の真上にあった顔は、嬉しいような、悲しいような、殊にらよく分からない顔をしていた。
「幸せだよ。きっとボクは、菊華と会わなければ幸せということすら知らなかった」
「そっか……」
見上げた先にあった顔は、何故か寂しそうな気がした。
「でもね、殊。それは魔法じゃないんだよ」
彼女は優しく殊の頬を撫でると、ゆっくりと顔を近づけて口を開く。
「それは、呪いなんだ。君を束縛するための呪い」
「菊華……?」
「人はね、一度幸せを知ってしまったら、昔の生き方には戻れないんだ。それは麻薬のように、依存して、なくてはならないものになる。僕は、殊と一緒にいたかった。だから僕は、殊が僕無しではいられない呪いをかけた」
ごめんね、と彼女は小さく呟く。その声は間違いなく、震えていた。
「いつか殊は、後悔する。僕と会ったこと、僕と生きたことを。そして僕を憎むだろう」
「後悔なんてしない」
しかし、殊の返答に迷いはなかった。頬に添えられたままの手を握り締め、殊は微笑む。微かに見開かれた漆黒の瞳を真っ直ぐに見て、殊はもう一度同じ言葉を繰り返した。
「後悔なんてしないよ。ボクは菊華に会えて良かった。そうでなければボクじゃなかったもの」
きっと生きていたとしても、それは「殊」ではなかった。人として生きてはいなかった。そんな確信が殊にはあった。
「それにね、菊華を憎むことなんてないよ。菊華は、ボクの全てなんだから」
自分の全てを憎むなどことはありえない。自分の世界を憎むことなど出来はしない。だから殊は、そんなことが起きるなど全く想像できなかった。
「……そっか」
そんな殊の内心を察してか、やっと彼女は安心したように笑う。それを見て、殊はさらに笑みを深くした。
「約束するよ。菊華とボクは、ずっと、ずっと一緒だ」
「うん。約束……だね」
殊はずっと思っていたのだ。
彼女は自分の全てであり、世界だ。そしてその世界が無くなってしまった、自分もまた、無くなるのだろうと。
「……どうしたの、いきなり?」
ふと思って呟いた言葉の返事は、とても胡乱げだった。
ソファーの上から不思議そうな顔を覗かせてきた彼女に、床に座っていた殊は今読んでいた絵本のページを見せる。そこに登場する魔法使いは、不思議なことを簡単に叶えてしまう優しくて、強い人だった。
「これ。菊華も、できるかなって」
「……いや、出来ないよ?」
「そうなの?」
本気で驚く殊に、彼女は小さく苦笑する。ぽん、と殊の淡い髪色の頭に手を置くと、その手からそっと絵本を取り上げた。
「それにしても魔法使いか……なんでそう思ったの?」
「だって……」
行儀よくソファーに座る彼女の足に寄りかかった。撫でてくれる手が酷く心地よく、甘えるように膝へと頭を乗せる。彼女は小さく笑うだけで、されるがままでいてくれた。
「菊華は、ボクになんでも、くれたから」
「そうかなぁ……」
「くれたよ。名前も、生きるってことも、ボクの全てを」
そうかなぁと、彼女はまた繰り返す。しかし、殊はいたって真面目だった。
「菊華がいなかったら、きっとボクはなにもなかった。何も知らず、何も感じず、ただ生きていくだけだった。だから、菊華は、全部をボクにくれたんだ」
「……殊はそれで、幸せ?」
ゆっくりと撫でていた手を止め、彼女はぽつりと問いかける。その声がいつになく力なく聞こえて、殊は顔をあげる。
自分の真上にあった顔は、嬉しいような、悲しいような、殊にらよく分からない顔をしていた。
「幸せだよ。きっとボクは、菊華と会わなければ幸せということすら知らなかった」
「そっか……」
見上げた先にあった顔は、何故か寂しそうな気がした。
「でもね、殊。それは魔法じゃないんだよ」
彼女は優しく殊の頬を撫でると、ゆっくりと顔を近づけて口を開く。
「それは、呪いなんだ。君を束縛するための呪い」
「菊華……?」
「人はね、一度幸せを知ってしまったら、昔の生き方には戻れないんだ。それは麻薬のように、依存して、なくてはならないものになる。僕は、殊と一緒にいたかった。だから僕は、殊が僕無しではいられない呪いをかけた」
ごめんね、と彼女は小さく呟く。その声は間違いなく、震えていた。
「いつか殊は、後悔する。僕と会ったこと、僕と生きたことを。そして僕を憎むだろう」
「後悔なんてしない」
しかし、殊の返答に迷いはなかった。頬に添えられたままの手を握り締め、殊は微笑む。微かに見開かれた漆黒の瞳を真っ直ぐに見て、殊はもう一度同じ言葉を繰り返した。
「後悔なんてしないよ。ボクは菊華に会えて良かった。そうでなければボクじゃなかったもの」
きっと生きていたとしても、それは「殊」ではなかった。人として生きてはいなかった。そんな確信が殊にはあった。
「それにね、菊華を憎むことなんてないよ。菊華は、ボクの全てなんだから」
自分の全てを憎むなどことはありえない。自分の世界を憎むことなど出来はしない。だから殊は、そんなことが起きるなど全く想像できなかった。
「……そっか」
そんな殊の内心を察してか、やっと彼女は安心したように笑う。それを見て、殊はさらに笑みを深くした。
「約束するよ。菊華とボクは、ずっと、ずっと一緒だ」
「うん。約束……だね」
殊はずっと思っていたのだ。
彼女は自分の全てであり、世界だ。そしてその世界が無くなってしまった、自分もまた、無くなるのだろうと。
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HN:
杜羽子・殊
性別:
非公開
自己紹介:
ダンピール×魔法使い。10歳。
幼い容姿とは裏腹に、大人びた少女。基本好奇心旺盛、時により年相応に無邪気。が、過去は結構デンジャラスだったりする。
自分の唯一の世界だった人を捨て、武蔵坂学園へと来る。
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