忍者ブログ
TW4、サイキックハーツの杜羽子・殊(d03083)のキャラブログ。仮プレだったりSSだったり。SSは少し暗め。分からない人はカムバック推奨。コメントはお気軽にどうぞ。 世界を捨てた少女は、何の夢を見るか? パス付きは殊が書きなぐったもの。数字4文字。どうしても気になる人はお手紙でどうぞ。
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ある夜の、夢の話。


※殊の闇墜ち人格が登場しています。

『幸せを取り戻したくないの?』
「かつての幸せはかつての幸せだ」
『幸せに帰りたくはないの?』
「ボクはもう帰れない。こちら側に来たんだから」
『幸せでいたくはないの?』
「幸せなんて、いつでもなれる」
暗闇の中、そいつはくすりと笑った気がした。
『嘘ばかり。本当は後悔している癖に』
ボクと全く同じ声なのに、そいつはボクと全く異なる女性的な口調で嘲る。
『本当は元の幸せに戻りたいくせに』
自分の中に住むもう一人の闇の自分。一度目覚めたそいつは夢の中で、姿は見せないままにいつも問いかけてくる。
『“あの人”に本当は会いたくてたまらないんでしょう?』
きゃらきゃらと耳障りな笑い方をするそいつを、ボクは睨みつける。最も暗闇ばかりで姿は見せないから、声のする方におおよその予想をつけてだ。
本当は無視をするのが一番いいだろう。けれどそれが出来ないのは、夢の中だからか、ボクがまだ幼すぎるからなのか、わからない。
「ああ、会いたいさ。その時は灼滅者として、だけれど」
『殺すの?あの人を』
「もちろん」
『本当かしら?』
きゃらきゃらとそいつは再び笑う。
『本当に殺すため?仲直りするためじゃないの?戻りましょうよ、かつての幸せに。あの人だってきっと許してくれる』
「……馬鹿なことだ」
『いいえ馬鹿じゃない。貴女だって本当は思ってるでしょう?私は貴女だもの。貴女は私でいる時が一番幸せだったはずよ」
「違う」
『いいえ、いいえ。嘘は良くないわ。だってあの時、貴女は幸せが壊れたと言った。私の時が幸せと言ったじゃない』
言った。確かに言った。
「……」
だからボクは言い返せない。
彼女が言ったことはすべて本当だ。ボク自身、矛盾しているのは気づいている。
あの人といるだけで幸せだった。ダークネスなんて関係なかった。闇堕ちして、あの人が変わったと気付いても尚、ボクはあの人を愛していた。
『当たり前よね。貴女はあの人を愛していたいたの。昔のあの人には親愛を。闇のあの人には純愛を。貴女は捧げていたんだもの』
「黙れ!!」

自分の予想以上に大きく、激しい声で、ボクは夢から叩き起こされた。
「っ……」
早くなっていた鼓動と呼吸を落ち着けて、深く息を吐き出しながら手で顔を覆う。顔から全身まで酷く汗をかいていた。だから目尻を濡らす雫は、汗なのだと思い込むことにした。
喉に渇きを感じて、ふらつきながら冷蔵庫まで行って麦茶をコップに注ぐ。一気に飲み干して、ようやく落ち着いたような気がした。
「……愚かな話だ」
台所のシンクにもたれて、ボクは呟いた。
目が覚める直前にいったあいつの言葉をぼんやりと反芻する。
『私に変わる気があるのならいつでも言って頂戴。ご主人様だもの。私はいつでもあの人を探せる。幸せになれるの』
「そんなの聞くまでもない……」その場にしゃがんで、呟いた声はやけに弱々しいものだった。
ボクがあの人と会う時は、どちらかが死ぬ時だ。私からボクへと戻った時にそう決めた。
「ボクがボクとして生きるためなら、なんだってする……」
そんな理由など、いちいち問うまでもない。
「幸せなんて……」
ボクは目を閉じる。
かつての幸せに戻れないなら、新しい幸せを探すしかないだろう。

けれどまだ、ボクにはあれ以上のしあわせがなんであるか、わからなかった。

PR
この記事へのコメント
name
title
color
mail
URL
comment
pass   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

secret(※チェックを入れると管理者へのみの表示となります。)
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
フリーエリア
プロフィール
HN:
杜羽子・殊
性別:
非公開
自己紹介:
ダンピール×魔法使い。10歳。
幼い容姿とは裏腹に、大人びた少女。基本好奇心旺盛、時により年相応に無邪気。が、過去は結構デンジャラスだったりする。
自分の唯一の世界だった人を捨て、武蔵坂学園へと来る。
バーコード
ブログ内検索
P R
Template and graphic by karyou
忍者ブログ [PR]