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TW4、サイキックハーツの杜羽子・殊(d03083)のキャラブログ。仮プレだったりSSだったり。SSは少し暗め。分からない人はカムバック推奨。コメントはお気軽にどうぞ。 世界を捨てた少女は、何の夢を見るか? パス付きは殊が書きなぐったもの。数字4文字。どうしても気になる人はお手紙でどうぞ。
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少女が戦い、強くありたい理由。

※相変わらず鬱々と。ただ戦闘無双が書きたかっただけなのに気付いたら……(背後談)







「ねぇ、殊。強くならなければ駄目だよ」
「どうして?」
「強くなれけば、生きていけないんだ」



夢を見た。大好きだったあの人との思い出の夢を。
夢の中のボクは今よりもっと小さくて、ずっと、弱かったと思う。きっとあの人から戦い方を教わり始めた頃だろう。
夢の中のあの人は昔の通りの優しい声で、ボクに戦い方を伝える。けれどずっとボクの後ろにいて、顔を見る事が出来なかった。
そしてボクに言うのだ。『強くなければ生きていけない』、と。
「夢でもいいから、会いたかったな……なんて」
つい最近発見されたばかりだという建物に足を踏み入れながら、ボクは誰にでもなく呟いた。 ダークネスが大量に住むというこのビルは、ブレイズゲートという。近頃は暇になると探索に来るのが日課になっていた。
「まぁ、一人は久々なんだけど……」
敵も多いし、まだそれほど強くはないボクは、普段なら誰かしらについて回っていた。しかし、今日は誰も誘っていないし、行く事も誰にも伝えていない。理由はこれと言ってないが、なんとなく、今日は一人で回りたい気分だった。
……いや、理由なら恐らくあるのだろう。きっと、あの人を思い出したせいだ。
「強くなければ、生きていけない……」
それは実際、あの人が繰り返し言っていた言葉だ。弱くては生きていけないから、強くなければならないと。生きていたいのならば、強くなければいけないのだと。
確かにその通りだと思う。昔はいた場所は子供一人だけで生きるには辛すぎた環境だった。あの人と会うまでも、会ってからも、なりふり構わずに生きていた。他者を労わるのではなく傷付け、奪う。それが人から頼まれたことの時もあったし、必要に迫られてだったこともある。そんな世界だった。そして今だって、生きるために戦うことを選んだのだ。
戦わなければ生きていけない。強くなければ戦えないのだ。
だから。
背後から現れた複数の気配を感じ、僕はそっと右手を上げた。
「ボクがボクであるために」
言葉と共に現れる黒いカランビットナイフ。それは、昔あの人が使っていたもの。冷たい感触がするグリップをしっかりと握りしめ、ボクは右手を額にあて目を閉じた。
ボクは戦う、強いボクである。ボクとして、生きるために。
目を開けて、振り返ると同時に走り出す。視界に映る敵の数は三つ。まだブレイズゲートは入ったばかりだ。この程度の敵は、序の口にも入らない。
こちらは一人、相手は複数。けれど負ける気はしなかった。
「いいよ、遊ぼう?」


   ◆  ◆  ◆


 一つ一つの威力は小さくても、いつかは積もり、大きな被害となる。いつ襲われるか分からず、休む暇もない敵陣の中では猶更だ。
迷宮の主である悪魔を倒し、さらに深く進むこと十数階。殊はそのことを身をもって感じていた。
 鎌鼬の刃が殊の腹をかすめて空を切る。バックステップをすることでそれを避けた殊は、背後に気配を感じて左手の杖を後ろへ振り抜いた。同時に腕に走る、衝撃。 包帯男の日本刀と銀細工の杖がぶつかり、嫌な音を立てた。
「っ……」
 小柄な体躯の殊では、その拮抗は数秒しか持たない。ナイフを持った右手を杖に添え、自分の身に届く前に、殊は渾身の力で刃を押し返した。そのまま包帯男ががひるんだ隙をついて距離を詰める。
「悪く、思わないでね」
 くるりとナイフを逆手に持ち直し、敵の喉元を一閃。一拍置いて赤い液体が噴水のように噴出し、自身の包帯を紅に染めた。それは殊にも降りかかり、ナイフに纏わせた赤い燐光が喜ぶようにざわつき、血を啜り上げた。先程腹を掠めた際に出来た傷が瞬時にふさがっていくのを感じる。
 力が抜けた相手の体を蹴り飛ばし、その反動を利用して殊は高く上へ跳んだ。群がるように飛びかかってきた化け物の群れがその目的を失くし、ぶつかり合う。それを無感動に見つめながら、再びナイフを持った手を上げた。指差すのは群れの中心。強くイメージするのは、絶対零度。
「永久に、おやすみ」
 ふ、と息を吹きかけるように小さく呟く。熱を奪う魔法はその言葉を合図に爆ぜ、化け物の群れは瞬時に音を立てて凍りついた。しかし内何体かは完全に凍りつく前に逃げだし、怒りをあらわに殊を睨みつけた。その内の一体である虎によく似た獣が飛び上がり、着地する直前の殊に迫る。
「くっ……!」
 咄嗟に杖で牙を防ぐが、体勢が悪かった。勢いまでは殺し切れず、かと言って踏みとどまることもできず、小さな体は吹き飛ばされた。全身を壁に強かに打ち据え、軽く意識が飛びかける。頭を一つ振って朦朧とする意識を覚ます。立ち上がりかけたところに背後から強い衝撃。
「が、はっ……!?」
 再び転がる体。せき込みながら攻撃を受けた方を見れば、虎の獣と同じく炎を纏う女の異形の姿。その後ろには猫の異形の姿をした少女の姿もあった。
「やるね……」
 ふらつく足を叱咤して立ち上がり、振り降ろされた攻撃に対してギリギリで体を反らす。空振り、守りががら空きになったところへ左手の杖を後頭部に叩き付ける。魔力を込めた一撃に猫娘は地へと転がり、一度びくんと跳ねた後、動かなくなった。
「痛っ……」
手にじりりとした痛みを感じ、殊は思わず顔をしかめる。先程の虎の獣から受けた攻撃が防ぎきれていなかったようだ。杖を持つ手を見ると、指先に小さな炎が燻り、じわじわと広がっている。万全の状態ならまだしも、疲労が積み重なった今ではその痛みにすら意識をもっていかれそうだった。
「炎……」
殊自身は炎を操る術は持たないが、そういえば自分の周りには多くの炎使いがいるなと、重い体を起こしながらぼんやりと考える。あの人達の炎はもっと苛烈で、それでいて暖かいけれど。
「お前のは、熱いだけだ。つまらない色だね」
眼前に残るは炎の虎一体。よく見ればその体の一部は殊が放った氷に覆われ、足も引きずっていた。満身創痍なのはお互い様のようだ。
深く息を吸い、荒くなった呼吸を整える。鉛のように重い腕を挙げ、逆手に持ったナイフを胸の位置へ。
「……お前は、何のために戦うの?」
ふと気になって、集中は解かないままに殊は獣へ問うた。
答えは勿論無かった。獣はただ、炎を上げ咆哮するだけだ。まるで戦う事こそが自身の存在だというように。
元より答えは期待していない。ただ、聞いてみたくなっただけだ。構わずに殊は言葉を続ける。
「ボク? ボクはね、ボクであるために戦うんだよ」
言って、駆ける。ほぼ同時に獣も地を蹴った。
「灼滅者がダークネスを倒す存在だっていうから。そしてボクは灼滅者、だからさ」
速く。ただ速く。それだけを意識してナイフを振るう。迫ってきた爪を前脚ごと切り払い、身を低くしてさらに踏むこむ。狙うは、ガラ空きとなった腹部。ナイフに赤きオーラを纏わせる。そして、渾身の力をこめて刺し貫いた。
暖かい感触、肉を切る手応え。構わずに、グリップを握り直し下へ振り下ろす。そして留めとばかりに殊の体より一回り大きいその体を蹴り飛ばした。
 瓦礫を飛ばし、派手な音をたて、巨躯は床へと転がる。広がっていく赤い液体。起き上がる気配は、ない。
「はぁ……」
 敵が完全に絶命したのを確認して、殊は息を吐き出した。膝から力が抜け、その場に座り込む。立ち上がる気力は残っていなかった。
先ほどまでの殺し合いが嘘のように、あたりは静まり返っている。自分以外、この空間で息をしている者はいなかった。
当たり前だ、今日はたった一人でここまで来たのだから。
「誰もいない……」
頑張ったと撫でてくれる人もいない、背中を預けられる人もいない。
ずっとずっと共に生きてくれたあの人は、もういない。
ここには、誰もいない。
「やっぱり一人は、さみしいよ……」
ぽつりと零れた言葉は、泣きそうな声だった。
どれだけ強くても、生きていけても、一人だったら意味がない。何故なら殊はもう知ってしまったのだ。誰かといるという幸福を。まるでそれは麻薬のようで、一度味わえば再び求めてしまう。どう足掻いても、知る前には戻れないのだ。
「あっ……」
一瞬だけ意識が飛び、気付けば殊はコンクリートの床に寝転んでいた。どれだけ気力ももう手足はピクリとも動いてくれない。限界だった。
「ここまでだね……」
周囲の気配探るも近くに敵がいる様子はない。せめて出口へ向かえるまでは休むことができるだろう。そう思って、殊はゆっくりと目を閉じた。
 遠のく意識の中でかつて自分を包み込み、救い上げてくれた黒い影が浮かび上がる。いつも纏っていた菊の香り、黒で統一された服。そして、短い漆黒の髪と……。
 影は優しい目でこちらを見つめていた。しかしその瞳は吸い込まれるような闇の色ではなかった。
 それはまるで、炎のような……。
 考えが纏まりきらない内に、殊の意識はしばしの浅い眠りの中へと落ちていった。






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プロフィール
HN:
杜羽子・殊
性別:
非公開
自己紹介:
ダンピール×魔法使い。10歳。
幼い容姿とは裏腹に、大人びた少女。基本好奇心旺盛、時により年相応に無邪気。が、過去は結構デンジャラスだったりする。
自分の唯一の世界だった人を捨て、武蔵坂学園へと来る。
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